自閉症と異常反応③ 蝶、いる?

この記事は以下の二つの過去記事の続きです。

minori-yadorigi.hatenablog.com

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目次

 

視覚について

自閉症と異常反応の「重なる点」ばかりを書くとバランスが悪いので、重ならないと思う点も書いておきます。

 

東田直樹さんの本から

視覚的な認知について、東田直樹さんの『続・自閉症の僕が跳びはねる理由』にはこんな風に書かれています。

 全体より部分に目がいくこともあります。しかし、それは部分しか見えないことではありません。部分が気になってしまい、それが頭の中でいっぱいになるのです。(中略)

 例えば、蝶を見ます。すると、蝶と判断する前に、蝶の羽の白い色が目の中に飛び込んでくるのです。目で見ているものは蝶なのに、頭の中は白い色でいっぱいになります。それはとても魅惑的で、たぶん時間は一瞬だと思いますが、自分には永遠に続く美しさに感じられます。(中略)

 僕は「蝶、いる?」と聞くこともあります。母が「いるよ」というと、目の前にたくさんの美しい蝶が飛び立つ姿が思い浮かび嬉しくなります。(後略)

  『続・自閉症の僕が飛び跳ねる理由 会話のできない高校生がたどる心の軌跡』第二章 感覚 12 物の見え方に違いはありますか?より引用

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異常反応レポートから

東田さんが書いている「部分に目がいく」という点。

異常反応42%だった方のレポートの中の「視野が狭かった」という点と重なりそうだと言えなくもないですが、何か少し違う気がします。

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この方が気功を受ける前は視野がせまく、同時に暗い感じであったそうです。昔のフィルムカメラのように、焦点のあったもの以外はぼやけて見えたそうです。

 

東田さんの記述からは、焦点が合った部分以外が「昔のフィルムカメラのように暗い」とか「ぼやけている」というように読み取ることはできそうにありません。

むしろ、フォーカスされた部分の鮮やかさについて書いているような感じです。

 

自閉症関連本から

東田さんの本以外の自閉症関連本として、私の手元にはこの二冊の本がありますが、似たようなことに関する記述は見つけられません。

calil.jp

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発達障害本から

自閉症本を離れて、もう少し広く「発達障害」に関する本を見てみますと、こんな記述が見つかりました。

聴覚優位の能力

視覚優位とは反対に、聴覚優位の人は、空間認知が苦手ですが、踏襲性を必要とする学習や語学などは、聴覚からの記憶の良さが手伝いたいへん優れています。(中略)聴覚優位の人は、聴覚や言語からの情報をもとに、いっぺんにではなく時間を追い、順番に段階を追って理解することが得意で、言語的な手がかりを用います。部分から全体に理解を進める「継時処理」を得意とします。 

 岡南『天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル』より引用

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この本は認知の偏り(特に視覚と聴覚)について書かれた本です。著者が用いている「視覚優位」「聴覚優位」という言葉からもうかがえるように、認知の偏りについてポジティブにとらえた内容になっています。

この記述と異常反応レポートを比較しても、やはり重なりそうにありません。

「部分の認知から入る」理由が、「視野が狭くて暗いから」とか「焦点があった部分以外がぼやけているから」であるというようには読めないのでなないかと私は思います。

 

考察は次回記事に続く。

 

参考資料

 岡南『天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル講談社(2010年)

東田直樹『続・自閉症の僕が跳びはねる理由』エスコアール(2010年)