自閉症と異常反応⑭ フラッシュバック&パニック その3

この記事は以下の過去記事の続きです。

自閉症と異常反応⑬ フラッシュバック&パニック その2 - 宿木御法のWhite Magic Life!

 

前回は異常反応と連結したトラウマについて書きました。

異常反応と連結したトラウマは、やっかいです。「なぜそれがトラウマなのか」と本人に尋ねても、おそらくはっきりとした理由はわからないからです。

こうしたトラウマと自閉症との深い関連を、私は仮定しています。

 

 

自閉症本から

前回引用させていただいた資料は東田直樹さんが中学生のころに書かれた本ですが、ここに引用させていただくのは大人になってから書かれた本です。

 幼かった頃、家族は僕の様子を観察し、泣いている原因を探ろうとしましたが、理由はさまざまでした。それに気づいてからは、少しでも泣いている僕の気持ちが軽くなるように努力してくれたのです。

 母は僕が泣くと「つらかったね」「悲しかったね」と言って、よしよししながら抱きしめてくれました。父や姉から、泣くなと注意されたこともありません。母の腕の中で、泣きたいだけ泣くことができたのは、本当に幸せでした。

東田直樹『跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』イースト・プレス(2014年)

 

前回の引用部分と似ていますが、ここではご家族が、直樹さんの泣いている原因を探っても特定することはできなかったというようなことが書かれています。

このことに対する私の仮説を書いてみます。

 

ふつうのトラウマの場合 

ふつうのトラウマは、できごとを直視し、心の毒を抜いてくと次第に思い出しても平気になっていきます。 

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こうしたトラウマならば、「原因を探る」とか「話し合う」という方法でも解決するでしょう。

 

異常反応と連結したトラウマの場合

ところが、異常反応との連結があるとそうはいきません。

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この絵にあるように、共通性をもってつながったトラウマが枝分かれする木のようになり、異常反応という土の上に生えているような状態になります。すると、異常反応が生み出す心の毒が、まるで養分のように「トラウマ・ツリー」に供給されつづけることになります。

 

こうしたトラウマは、非常にやっかいな存在です。

「なぜそれがトラウマなのか」と本人に尋ねても、おそらく論理的には答えられないからです。

 

異常反応の不合理性

異常反応は「2歳以下に作られた不合理な恐怖心」です。

感覚が未分化で、理性も未発達な乳幼児が、肉体的に衝撃を受けたときに形成した反応が異常反応なのです。

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この人に、「赤色、怖くないよ」「魚を焼くにおい、安全だよ」「エンジン音は、警報とは違うんだよ」などと言葉で説明しても、異常反応が消えるわけではありません。異常反応はそういう仕組みにはなっていません。

同じように、異常反応と連結したトラウマも、言い聞かせたり、話し合ったりしても根本的には解決しないでしょう。それは、異常反応自体が不合理な性質のものだからです。

 

 

参考資料

calil.jp