自閉症と異常反応② たくさんのバイオリンの中から一つのバイオリンを探す

こんにちは宿木御法です。前回の記事に関連して、自閉症と異常反応の重なりについての私の考えを書いてみたいと思います。

 

  ↓ 前回の記事

minori-yadorigi.hatenablog.com

 

目次

 

聴覚について

自閉症関連の本の中にこのような記述があります。自閉症スペクトラムの特徴の中で音の認知について書かれた部分です。

とくに、ざわざわとした雑音が聞こえるなかでは、名前を呼ばれたことに気づきにくくなります。自閉症スペクトラムがあると、目や耳から入ってくるたくさんの情報から、いま自分に必要な情報だけを的確に取り出し、あとの情報を捨てるという脳の働き(選択的注意)がスムーズにできません。

『最新図解 自閉症スペクトラムの子どもたちをサポートする本』(ナツメ社・2017)より引用

 

calil.jp

東田さんの記述から

東田直樹著『続・自閉症の僕が跳びはねる理由』の中で見ると、こんな風に書かれています。

どうしてみんなが、誰かの声を聞いてそちらにむけるのかわかりません。声が聞こえてくることに気づき、それが自分に言われている言葉だと判断して、すぐに相手に答えられることが信じられません。そのうえ、声が複数の人となると、オーケストラの演奏で、たくさんのバイオリンの中から一つのバイオリンの音を探すことくらい、僕には難しいことです。 

 『続・自閉症の僕が跳びはねる理由 会話のできない高校生がたどる心の軌跡』第一章 コミュニケーション 3 声をかけても気がつかないのはなぜですか?より引用

 

これを読んだとき私は「オーケストラから一つのバイオリンの音を聞き分けるのは無理だ…」と思いました。

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私は自閉症について調べたり考えたりするとき、東田直樹さんの本を頼りにしています。『続・自閉症の僕が跳びはねる理由』は東田さんが高校生の時に書いた本です。

この本の優れている点の一つには、「自閉症の内面世界を誰にでも分かりやすい比喩に置き換えて書いてある」というところがあります。声をかけても気づかない時というのはそういう感じがするものなのですね。平易な言葉で書かれていますが、すごく分かりやすかったので印象に残りました。

  

calil.jp

 

「異常反応」という切り口から

前回記事では、私はこんな風に書きました。

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異常反応によって利用できる精神エネルギーが減ってしまうため、複数の音を同時に認識するのが苦手になることもある、というところです。(一番上の自閉症の本に書かれているような知識が先にあるので、そちらに寄った絵になってしまっていますが…)

この絵の元になった小池先生のブログの記述は以下のようです。

また聞こえる音についても、犠牲にされるケースがあります。私たちの普通の生活環境では、多くの音が同時に混ざって聞こえてきます。その全ての波動を、鼓膜は捉えています。それを音として認識するのに、精神エネルギーを使います。

 ですから大きな異常反応を抱えていると、複数の音を同時に認識するのが苦手になるケースがあります。同じ生活をしていく中で、解体後、初めてそこにあり続けた音に気付く体験談もあります。

 一義流気功創設者 小池義孝公式ブログ(Amebaブログ)より引用

 

ameblo.jp

 

 一番上の自閉症の本では「選択的注意」という言葉が使われています。たくさんある情報の中から、ある特定の情報だけを選択してそれに注意を向けるためには「気(精神エネルギー)」が必要です。そのような精神のはたらきを、異常反応(の心の毒)が妨げているから、音の聞き分けも難しくなる、というように説明できるのかもしれません。

 

参考資料

『最新図解 自閉症スペクトラムの子どもたちをサポートする本』ナツメ社(2017年)

『続・自閉症の僕が跳びはねる理由』エスコアール(2010年)

一義流気功創設者 小池義孝 公式ブログ(Amebaブログ)