愛なしではつまらない!①

 

「古文単語ゴロゴ」より

記事のタイトルは「古文単語ゴロゴ」による語呂合わせ、

形容詞「あいなし」の意味の覚え方です。

古文単語ゴロゴ

古文単語ゴロゴ

  • 作者:板野 博行
  • 発売日: 2013/07/27
  • メディア: 単行本
 

  

 こんにちは、宿木御法です。

教師時代、ある高校で、三年生の進路が決まった人のお話を二年生が聞く会みたいなのがあって、私も二年生と一緒にお話を聞く機会がありました。

三年生が「僕は古文単語ゴロゴで古文単語を覚えました」と言ったので、

二年生が「じゃあ何か一つゴロを教えてくれませんか?」と質問すると、

 

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というアンサーが。その三年生の言い方がとてもかっこよかったので、『古文単語ゴロゴ』、いいな!と思いまして、私も本屋さんでmyゴロゴを一冊購入しました。

 

「愛」=もともと中国語

「愛(あい)」という言葉は、漢字を音読みしたものです。つまり、漢字と一緒に日本へ入ってきた言葉であり、日本にもともとある言葉ではないのです。

「あいなし」の「あい」も、ゴロゴでは「愛」になってますが、これは単なる覚え方であって、それが語源であるとは言い切れないようです。

 では、古来からある日本語(和語)には、現代日本語の「愛」に相当する言葉はなかったのでしょうか?

 

和語「こころざし」

近いもので「こころざし」という語があります。これも古文単語帳に載っている重要な単語です。現代語訳するときは「愛情」と訳したりします。

管見ですが、私が見たことがある「こころざし」の用例は「両親に対して」とか「子どもに対して」など、自分と近しい間柄にある特定の人に対する気持ちを表すことが多いように思います。

『精選版 日本国語大辞典』(小学館)によると、この意味で使われたことが分かる最も古い用例は平安時代初期のものようです。

 

和語「かなし」

これも古文単語として、現代日本語の「愛」に近い意味の言葉だと思います。

表記が「愛(かな)し」となることもあります。現代語訳のしかたは「かわいい」「いとおしい」などです。しかしこれも「こころざし」と同じく近しい間柄にある特定の人に対する気持ちを表すことが多いようです。

『精選版 日本国語大辞典』(小学館)によると、こちらは奈良時代から見られる使い方のようです。

 

現代日本語の「愛」という語

現代語の「愛」という言葉は、いろいろな意味で広く語られていると思います。

『精選版 日本国語大辞典』によりますと、

「愛」という語が(古語の「こころざし」のような)「親子、兄弟などが互いにかわいがり、いつくしみあう心」という意味で使われだしたのは、平安時代末期からのようです。

また「ものを貪り執着すること」(欲愛など)という仏教的な意味合いで使われたのが、中世頃からのようです。

「異性を慕う」(恋愛など)という意味で使われだしたのは近代から、

キリスト教的な「神が示す無限の慈しみ」(アガペー)という意味合いを表すようになったのも、近代からのようです。

 

一義流気功が考える「愛」とは?

ここから気功の話です。

「愛」という言葉は、現代日本語としては意味が広くなりすぎて、あいまいにとらえられている部分もあると思うのです。

そのせいで、

愛のエネルギーとか

愛のヒーリングとか言いますと、

よく分からないけど良さそうだとか、

逆にかなり怪しげだ

という感じを受ける方もいると思います。

気功で「愛05」というメニューを扱っていくにあたり、そのあたりのことは慎重に語っていきたいと私は考えています。 

 

一義流気功の「愛05」はそうした方向性のものとは違うと小池先生は言っています。

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小池先生は、著書の『壱義流気功 技術と哲学』の中でこのように書いています。 

確かに、愛は素晴らしいものです。愛によって、多くの精神的な問題が改善しうるのも事実です。

しかし人間の精神は、愛情の精神エネルギー自体を、それ程には喜びません。より正確に厳密に見れば、愛は思いや感情ではなく、関係性を示す概念なのです。ですから喜びも、愛情で結ばれている関係性にあります。関係性を抜きにした愛に、さほど価値はありません。

よく知らない相手から、いつの間にか愛されていると知ったら、どう感じるでしょうか?おそらく、多くの方が、気持ち悪い、嫌だ、といったネガティブな気持ちになるでしょう。

 小池義孝『壱義流気功 技術と哲学』(kindle書籍)より引用

 

たしかによく知らない相手からいつの間にか愛されていると知ったら、気持ち悪いですよね。

小池先生によれば、「愛」は関係性を前提とした概念です。

それを考えると、現代語の「愛」にあたる言葉は、古語でいえば名詞では「こころざし」、形容詞では「かなし」と考えても良いのではないでしょうか。

 

「愛」という言葉はもともと日本にはなかったのですが、概念としては日本に昔からあったと考えて良さそうです。

 

関係性を抜きにしては成り立たないため、「愛は至上の価値である」とまでは言えません。しかし、古来から私たち日本人の心に受け継がれてきた重要な概念であるくらいには言えそうです。

 

愛なしではつまらない!

そう考えていくと、このゴロゴの意味がすごく深いものにも思えてきました。

 

次回につづく。

 

参考資料

精選版 日本国語大辞典 (第3巻)

精選版 日本国語大辞典 (第3巻)

  • 発売日: 2006/02/23
  • メディア: 大型本